・当選を喜ぶ翁長氏(中央。写真は日刊ゲンダイより)
先日行われた沖縄県知事選挙は大方の予想通り無事に爺長(おなが)さんの勝利に終わりました。今回の選挙の特筆すべき大きなところというのは、やはり保革対立という従来の沖縄県知事選における対立構造を脱した選挙戦だったということでしょう。基地問題はイデオロギーではなくアイデンティティにかかわる問題なのだと改めてこの結果が示したと言えるのではないでしょうか。勿論政権への逆風も必至です。先日ついに解散を明言した安倍首相ですが、これが逆風の1つとなることは必至。もともと自民のあまり強くない沖縄は全滅でしょうし、全国的にもどう転んでも議席が減ることは間違いありません。(あ、でも不正選挙やるから安泰かw)
・自民大敗…安倍政権に鉄槌を下した沖縄県民の凄まじい怒り(日刊ゲンダイ)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/155034/1
色々書きたいことはあるのですが、まずは恒例(?)となっている各地方紙の社説を読み解きからはじめましょう。最初は沖縄の2つの地方紙から...。1つ目は連載でも登場した瀬長亀次郎さんが社長を務めたことがあるところでもある琉球新報。2日に渡って今回の選挙の事を書いているのですが、まずは17日の記事から見てみましょう。
・新知事に翁長氏 辺野古移設阻止を 尊厳回復に歴史的意義
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-234623-storytopic-11.html
一方、政府は選挙結果にかかわらず、辺野古移設を進めると明言しているが、民主主義国家として許されない。埋め立て承認で地元の了解が得られたと受け止めているようだが、それも間違いだ。仲井真知事は前回知事選で県外移設を訴えて当選した。県民は辺野古移設推進にその後転じた仲井真知事を支持したわけではない。つまり地元の大半は了解などしていないのである。
まさに正論です。多くの人の記憶から消えつつあるのですが、仲井間前知事だって当初は県外移設派だったのです。それが途中で人質取られたか金積まれたかは分からないけど「変節」したに過ぎない。要するに民意はずっと辺野古移設反対なのだ。これをまずは認識しなくてはいけない。
・那覇市長に城間氏 果敢に公約実行を 県都でも民意が動いた
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-234669-storytopic-11.html
続く18日の社説では同日に行われた那覇市長選について取り上げます。(以下は記事より)
城間氏は最大の争点に、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の是非を挙げていた。知事選候補の翁長氏と連携し、県民の大多数の世論を挙げて移設反対を前面に打ち出す戦術を取った。
琉球新報と共同通信による那覇市の期日前投票の出口調査(サンプル数約1700)によると、投票に際して普天間飛行場の返還・移設問題を重視した人が約6割を占め、そのうち75%が城間氏に投票していた。保守、革新の伝統的な対立構図が息づいてきた那覇市長選の構図と異なり、城間氏の支持母体は那覇市で主流の保守層と革新が手を携えた。城間氏は基地問題が移設先だけの問題ではなく、全県民が向き合わねばならない課題であることを有権者に認識させることに貢献した。
その他、記事によると城間さんが公約に掲げたのは、4年連続で400人を超えているという待機児童の解消。これはもう全国的な問題なんですね。おそらく爺長さんもそうだと思うのですが、今回の選挙は基地が前面に出てこそいたものの、決してシングルイシューで争われたものではないのです。(というか基地問題は沖縄では生活から切って離せない問題ですもんね・・・)そして2つ目は沖縄タイムス。こちらも2日に渡って社説でこの選挙を取り上げています。まずは17日の記事から見てみましょう。
・[県知事に翁長氏]辺野古に終止符を打て(沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=90861
仲井真知事が昨年12月に行った埋め立て承認の法的効力は今も生きている。とはいえ、県外移設の公約に反して事前説明もないままほとんど独断で承認したことが有権者から2度にわたって否定された事実は極めて重い。もはや辺野古移設をめぐって丁々発止と渡り合う時期は過ぎた。「地元の頭越しには進めない」という普天間問題初期の政府方針に立ち戻り、計画見直しに向けた話し合いに入るべきである。1996年の返還合意からはや18年。住民にこれ以上、精神的負担を強いてはならない。ここまできてなお移設を強行するのは、暴力的な犠牲の押しつけである。
繰り返すようですが、埋め立て承認は知事が公約に反故してやったことであり、その有効性は極めて低いと言っていいでしょう。そして何よりも「地元の頭越しには進めない」という大前提を否定するのは到底許されることではありません。それからもう一点、この記事で注目すべきなのは後半の仲井真落選までの経緯を書いた部分。仲井真さんが「変節」を遂げたのは先述の通りなのですが、前知事はいかにして県民からの信頼を失ったのでしょうか?ちょっとそこを読んでみましょう。
昨年12月、仲井真知事は首相官邸で安倍晋三首相と会談し、沖縄振興策などの説明を受け、「驚くべき立派な内容」、「140万県民を代表して心から感謝する」と最大限の賛辞を連ねた。記者団に対しても「いい正月になる」と、耳を疑いたくなる言葉を連発した。知事が辺野古の埋め立て申請を承認したのはその直後である。この一連の言動が県民感情を刺激し、特に高年層の激しい反発を招いた。仲井真氏は出馬表明にあたって「県民に誤解を招いた」と陳謝し、選挙中も文書を配って重ねて「いい正月」発言をわびた。いかに有権者の拒否反応が大きかったかを物語っている。今回の知事選は仲井真政治に対する信任投票の性格を帯びていた。結果は仲井真氏のオウン・ゴール。「辺野古ノー」と同時に、「仲井真ノー」が示された選挙でもあった。
やはりその昨年の12月に何かがあったのでしょう。それが恫喝なのか買収なのか、はたまた当初からのシナリオ通りだったのかは未だ分かりませんが、1つだけ言えるのはよしんば翁長さんが同じことをすれば、また仲井眞さんと同じ道を辿るということです。このように今も沖縄は戦い続けているのです。続く18日の記事では、今回の翁長氏当選までの経緯を綴っています。
・[10万票差の深層]意識変化 大きな流れに(沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=90982
保革双方から支持された翁長雄志新知事の誕生は、沖縄の政治に新たな歴史を刻んだ。現職の仲井真弘多氏に10万票近い大差をつけての当選は、住民意識の変化という見えない「地殻変動」が強固なものであったことを示す。(中略)住民意識の変化を促した背景の一つに、沖縄経済における基地依存度の低下が挙げられる。県経済に占める基地関連収入の割合は、復帰時の15%から5%まで減った。翁長氏は「米軍基地は経済発展の最大の阻害要因」と繰り返し訴えた。基地を返還させ跡利用を図ることが沖縄の自立につながる、との考え方がじわり浸透していったのだ。
まず着目すべき部分がこれ。僕も前々から言ってたような気がするのですが、別段基地がなくても沖縄は十分やっていけるのです。それどころか翁長さんの言うように、基地は沖縄を経済的にも「阻害」する一因にすらなっているのですね。たしかに基地は「雇用」もうみます。米軍基地内には食堂やカフェなどは勿論のこと映画館などの娯楽施設もあり、軍人以外にも多くの従業員が必要となるのですが、当然その中にはアメリカ本土から来る人も居ますし、まんま全てが沖縄県民の雇用に繋がるワケではありませんし、たとえばそこに基地の代わりにショッピングモールでも作れば基地の何十倍もの雇用を生むのは明白です。また基地のある場所が比較的条件のいい土地だったりもするので、そうした意味でも基地は沖縄経済にとってマイナスなのです。それからもう1点着目すべきはこの部分。
最大の争点となった米軍普天間飛行場の辺野古移設問題をめぐっても、海兵隊の「抑止力論」は、今やすっかり色あせている。森本敏元防衛相が「軍事的には沖縄でなくてもいい」と認めたことからも分かるように、本土が嫌がるから沖縄に置くという発想は地域差別以外の何ものでもない。在日米軍再編に携わった米元高官は「18年前と現在の必要性をめぐる論議は必ずしも同じでない」と語っている。 政治的な強い意志があれば県外移転は可能なのである。
連載の中でも言ったように、そもそも辺野古の基地計画ができたのは1960年代。その頃と今とでは国際情勢が大きく変わっていて、現在では米軍とてずっと沖縄に留まるつもりではないのです。少なくとも「海兵隊(通称、殴り込み部隊)は撤退する」という計画があるのです。(米軍基地再編計画)
それに、そもそもよく自称保守の方が言う「抑止力」というのは証明できないものですし、もっと言えば、そもそもの「脅威」を作り出したのもアメリカです。すぐに「シナガー」を連呼する人には理解しがたいかもしれませんが、事実はそういうことなのです。(ナチスドイツの背後にロスチャイルドが居たり、中東におけるテロ組織を実はCIAやモサドが育成していた...というのと同じパターンと言えるでしょう。)
ここまで2つの社説を読んでもらいましたが、これで沖縄の切実な思いが多少伝わったのではないでしょうか。沖縄の地元紙はこのように今回の選挙を報じてきたのですが、他の地方紙はどうこのことを報じてきたのでしょうか?あと2つほど見てみたいと思います。まずは神戸新聞。18日の社説でこの選挙を取り上げています。
・沖縄県知事選/辺野古反対の民意は重い
http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201411/0007512034.shtml
消費税の再増税を延期して解散・総選挙の方針を固めたとされる安倍晋三首相は、国民生活に大きな影響を与える課題は選挙で信を問うべきとの認識を示した。そうした考えに基づけば、重大な争点に対して示された民意の重みは、地方選挙でも変わらないはずではないか。(中略) 普天間飛行場返還、県内移設の合意から18年。計画は迷走し、沖縄県民は翻弄され続けてきた。政策を転換し、新たな道を探るべきだ。それが沖縄の民意にほかならない。
おそらく国政選でも沖縄で自公は惨敗することになると思うのですが、ともあれ今回の選挙で示された民意が辺野古への「No」であるのは紛れもない事実。それとどう向き合うのか?我々は意深く見ていく必要があるでしょう。そして次は京都新聞。11月17日の社説で今回の選挙を取り上げています。
・沖縄新知事 重い「移設ノー」の民意
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20141117_4.html
1995年の米兵による少女暴行事件を受け、日米両政府が移設で合意して以降、「保守対革新」の対決が続いてきた知事選は今回「保守分裂」の要素が加わった。自民党が推薦した仲井真氏に対し、自民県連幹事長を務め、前回知事選では仲井真選対の本部長だった翁長氏が県内移設に異議を唱えた。共産、社民両党に加え、自民を含む保守系地方議員・団体の一部が翁長氏支援に回り、政権与党の公明党は自主投票を決めた。選挙中盤に行われた共同通信社の世論調査では、無党派層も半数以上が翁長氏を支持し、前回選で仲井真氏に投票した人の3割超が今回は翁長氏に投じるとした。最大の争点として辺野古移設を上げる人が6割を超え、移設賛成派は3割にとどまった。
書き忘れていたことでもあるのですが、まず第一に踏まえておくべきなのは今回の選挙が従来の保革対立という枠組みを超えたものだったということなのです。おそらくネット右翼やそれを支持基盤の1つとする安倍政権は「サヨクガー」を連発していることでしょうが、実際はそういうことなのです。それからもう一つ、ここも重要だと思ったので載せてみます。
市街地にある危険な普天間飛行場の固定化は許されないが、移設先が県内では、在日米軍施設の74%が集中する沖縄の「基地負担軽減」とは言えない。安倍政権は普天間配備のオスプレイの県外訓練拡大などに取り組むが、普天間での飛行回数は逆に増えている。2019年2月までに普天間を運用停止するとした方針も、米政府が拒否していることが明らかになっている。形だけの「負担軽減」に、県民の怒りが知事選で噴出したと言えよう。
自民党は「負担軽減に努力」なんてことを言ってましたけど、このように実際にはそれが全く進んでいないのです。しかもアメリカと沖縄に二枚舌。まぁこれらは今に始まったことではないのですが、だからこそ自民党は沖縄で信任を失ったのだということを改めて考えて貰いたいものです。
このように、各紙は沖縄県民の「怒り」の証左として、そして歴史的な1ページとして今回の選挙を取り上げています。思えば「沖縄論」の終了から1ヶ月。あの連載の中で僕は「本土が沖縄に寄り添う番だ」と訴えてきたのですが、機は熟したと言えるでしょう。今こそまさに絶好のタイミングです。沖縄の思いを無駄にしないよう、本土から全力で援護射撃をするときです。そしてもう1つ。沖縄県知事選は1つの良きモデルケースを残してくれました。それは野党の共闘です。小沢さんの言うとおり、もし今回の選挙で勝とうと思えば「反自民」の旗の下に野党が1つの政党に結集する他はないのです。(少なくとも現行の選挙制度ではそれが最善策なのです。それがいいか悪いかは別として・・・)保守革新を超えたモノにすることを考えれば、中心になるべきなのはやはり生活の党でしょう。そこに民主党が加わり、みどりの風が合流し、社民・共産が加わり...というのが望ましいと思われます。もう選挙まであまり時間はありませんが、もしそういうことが出来れば「倒閣」も十分に可能ということなのですから、やらない手はないでしょう。そんなところですが、本日はこれにて失礼します,ジベリ!
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