2009年8月20日木曜日

今更ながらのイラク戦争批判(最終章)

と,言うワケで今日は最終章,内側からイラクを侵略する占領軍について,と、全体の総括の2部構成でお送りします!



<其の四:占領軍は‘死の商人’

イラク復興支援は商機だった!

占領軍によって組織されたイラク暫定当局(CPA)の発令した幾つかの命令は、それを端的に示しています。下はその一例です。

関税、輸入税、ライセンス料などの撤廃(12号)

イラクの国有企業200社を強制的民営化(30号)

銀行への50%の外資参入命令(40号)

法人税の大幅引き下げ命令(49号)


アメリカが行っているこうした一連の法改正は、1907年に制定されたハーグ陸戦法規に反するものなのであり、要するにアメリカは国際的なルールを無視しているのです。しかし,光栄にも日本はその共犯者になることに成功しています。(日本の企業の中にもこうした中で甘い汁を吸っているところがあるんですね...。)



<其の五(結び):偽善者という名の‘加害者’>

このようにアメリカ軍を筆頭とする占領軍は、イラクを外側からも内側からも蝕んでいるのであり、残念なことに、現在の日本政府はその‘加害者’のひとりなのです。

ところで,イラクから帰還した自衛隊員の中にはPTSDを発病した者も少なくないといいます。更にはそれに起因して自殺した方もいらっしゃるそうです。非戦闘地域で現地人の歓迎の下、救援活動を行っていた彼らが、何を苦にして死んだのでしょうか?それを考えただけでも、このイラク派兵の‘奇妙な点’にお気付き頂けるかもしれない。やはり大々的に間違っているのだ。

100年後の歴史の教科書には、「アメリカは石油利権の獲得のためにイラクに侵攻し、略奪や無差別殺人を行った」とでも載ることでしょうし、幸運にもこの汚名は我が国にも与えられることでしょう。

僕はこうした事実を前にしても、いや,だからこそ「改憲」を主張したく思っています。「改憲は日本を‘戦争できる国に仕立て上げるものだ’」という人が未だ多くいますが、果たしてそうでしょうか?本当に第九条は‘平和を重んじる憲法’なのでしょうか?否,アメリカの下請け業者の如くイラクに連れていかれている自衛隊をみればその答えは明らかでしょう。  

 

憲法によって自衛隊を国防軍’として位置づけることは、そのまま‘日本を容易に戦争させない国‘にすることに繋がると僕は思います。

<ex:参考書籍&HP>

イラクの混迷を招いた日本の“選択”(かもがわ出版/630円<in tax>)

・ウィキペディア(←用語解説などの参考に)

自衛隊イラク派兵差し止め訴訟の会


今回の連載は人によっては目からウロコだったでしょうし、まぁ古い話題ですので別段,真新しさを感じなかった方もいらっしゃるでしょう。ここで僕が言いたかったことは次の3つ。まず第一に、この戦争を忘れてはいけない,ということ。そして第二にこの戦争が未だ継続しているということ。最後に‘改憲’が必ずしも「戦争できる国づくり」に繋がるものではない,ということ...です。

じゃあ今日はこの辺で,ジベリ!

4 件のコメント:

S.S. さんのコメント...

 S.S.と申します。勝手にコメントすることをお許しください。

「初めに」と「最後に」だけでも読んでくださると幸いです。

 まず初めに、平和国家形成のための改憲、この戦争を忘れてはいけないということ、戦争は終わっていないということ、その3点に関し、僕は賛成したいと思います。

 次に、その例とされたものが、どの項目に違反しているのかをお教えください。
12号40号に関しては、関税自主権を奪う行為などでおかしいとは思いますが、30号に関しては、フセインによる独裁的政治のもとで民間でやるべきものも政府の管理下に置かれていた、事によるもので何が問題なのでしょうか。49号に関しても、民間企業が回復に向かう策として、専ら先進国でも見られる行為であり、こちらも何が問題なのかお教えください。

 第三に、加害者被害者という主観的な表現は避けるべきだと思います。また、イラク戦争では今でも負傷者が出ていますが、無差別殺人等を行っているのはむしろシーア派等のイスラム組織であり、連合国軍が被害を被っているとも考えられるわけです。
 自衛隊イラク派遣に関しては、人道復興支援をしていたわけです。吸水のみならず医療技術を伝授したり、学校等を直したり作ったりしていたわけです。一方で、非戦闘地域といわれたサマワにも、軍隊ではないシーア派などのテロ集団による自爆テロ等で大きな被害をこうむったことは確かです。(これは軍事的活動を行っていたオランダ軍の影響とみる向きもあります)明白な答えとして、一つは、戦闘では無い「テロ」に苦悩したといえます。(調べてみたら、テロもPTSDの要因になり得るようです)また、サマワ住民たちは、「あの超先進国日本がサマワに来たからには、サマワはイラク一の近代的な街になれる。」と期待していた声が、フリージャーナリストによって明らかになっています。しかし、実際は、そういった技術を持っているのは民間であり、自衛隊は通常の状態に戻す、あくまで「復興」しかできないわけですから、住民は満足感はあっても、同時に失望もあったのではないでしょうか。二つは期待されながらも何もできない非力さという理由です。これに関してどう思われますか?

最後に、日本は戦争を放棄した特異な国です。僕は、まだ自衛隊が深く戦争に加担したとは思っていないので、若干のずれがあるとは思いますが、日本が改憲によってより平和的な国になることは、僕もそう望んでいます。日本を容易に戦争させない国に繋がる何かが起きてほしいものです。

天王寺センイチ さんのコメント...

>S.Sさん

コメントありがとうございます。

指摘頂いた点への反論は多々ありますが、何にせよ若年の方がこれ程国際情勢や国内問題に興味を持たれている,という点は素晴らしいと思います。そうした姿勢をこれからも大切にして貰えれば光栄です。


さて,では本題に移らさせて頂きます。

1、そもそもイラク戦争は、アメリカが‘サダム・フセインの成敗’を大義名分に始めたものでしたが、実態は‘地下資源の掌握のための侵略’でした。

それでもフセインが、金正日や毛沢東の如き悪人であれば、国際社会も現地の人もある程度許容したでしょう。

しかし,実際はフセインは独裁者というよりは「上からの改革の担い手」と呼ぶ方が正しく、分離主義者でも無い限りは寛容に接していた一面もありました。石油資源による利益を福福祉・教育・医療の充実といった

シーア派とスンニ派の宗教対立を緩和し、微妙なバランスを保たせることに成功していたのも事実です。(尚,この点は今回の連載の第一章に詳しいので一読下さい)


2、アメリカのイラクでの政策は、殆どのところ‘地下資源獲得政策’なんですね。

A・国有企業の民営化というのもその背景にはイラク王国を支えていた石油をはじめとする地下資源による権益を買収せんとするアメリカの意図があるんです。

B・法人税の引き下げは、たしかにプラスになることもありますが、場合によってはそうでもないんです。イラクが幾ら‘中東指折りの恵まれた国’であったとて、それとグローバルな競争力を持っていたか,は別の問題です。ハッキリ言ってそこは不十分だったでしょうし、今の国内状況で行ってしまえば、イラク経済は完全にアメリカ系の外資に浸食されてしまうでしょう。(そして、それがアメリカの狙いでしょうけど...)


3、僕がアメリカをはじめとする‘侵略軍’を加害者と呼ぶのには、次のような理由があります。(下記参照)

①イラク人→米軍が来なければ死ぬことは無かった。
②米兵及び多国籍軍→行かなければ死ぬことは無かった

⇒つまり、イラクへの侵攻を決定したブッシュ及びアメリカ政府こそが、諸悪の根源であり(勿論,テロ行為はいいことではありませんが)、やはりアメリカ側を加害者と呼ぶが相応でしょう。

日本はその戦争に「物資の補給」や「兵士の輸送」といった形で協力しましたが、それ以前の問題として、この戦争の開戦時に‘参戦’の立場をとっていることが大きな汚点でしょう。(自分の国でいきなりドンパチを始められたとして、それに‘賛成’した国が、ヒョコヒョコと「助けてあげるよ」なんて言っても「ふざけるな!」としか思えないでモノです...。)

ex・過去の記事でも書いてますが、僕はアフガンやイラクに自衛隊を送ることには反対ですが、国民の命を守るために‘海賊対策’として自衛隊を派遣することには賛成です。


最後になりますが、これからもこのブログの内容で気になること・分らないこと等あれば、お気軽にコメントないしメール送信して下さい。出来る限りでお答えしたいと思います。

S.S. さんのコメント...

わざわざありがとうございます。

 2,3に関しては、なんとなく把握できました。
 1に関してですが、確かに近代化を進め、宗教対立を安定化させたフセインですが、結局は、恐怖政治によるものですよね?国粋主義による全体主義国家を築いた、と個人的にフセインを評価しているのですが…。シーア派やクルド人を虐殺したり、粛清、クウェート侵攻などひどい行為を行ったのは誰でもないフセインです。この体制は、倒されてしかるべきかと。現に、体制崩壊時に、イラク人がフセイン像に対して靴を投げるなどの行為を行っているわけですし。
 ただ、それを行う手段を(別の意図があったとはいえ)戦争に頼ったブッシュもブッシュだと思いますが、他に手段があったのかといわれると、それも考えが浮かばないという…。
 結果的に、現在の状態になったわけですが、イスラム教の国では無かったら民主化が少しでも進んでいるのでしょうけど、派閥による宗教対立が続いてますよね。政治の方も、先日も、マリキ首相の反対勢力が手を組んだりしましたし。殺人を許容する宗教を把握するのはまだ僕にはできそうにないです。

天王寺センイチ さんのコメント...

ヾ(_ _*)返答遅れました。

イラク人の中にも「アメリカが来る前のほうが良かった」と云う声は少なくないようですし、実際,フセイン体制が崩壊したことでかえって治安は悪化し、死なずとも済んだ人がたくさん命を落としたワケですから…。

それに前体制のイラクが国粋主義,全体主義かと云われると、少々怪しいところはあります。あれは恐らくロシアと同じような「権威主義国家」止まりだったと思いますよ。功績を見るに、プーチンよりは良心的で有能にも思えます。)

たしかにクルド人虐殺のような非人道的なことをやっているのは事実ですから、同じイスラームの指導者であるサラディンと比べるとかなり見劣りする人物であり、‘完全な善人’と呼ぶには難しいでしょうが、少なくとも侵略戦争を起こしてまで取らねばならぬ首ではなかった,と思ってます。

あと,これは余談ですが、フセイン像のやつは「やらせ」の可能性が高いらしいです。米軍は意地でも英雄になりたかったんでしょうね。(市民に略奪を行わせたのも米軍とか…)


そもそも,アメリカはあくまでアメリカなんです。要するに世界政府でもなければ、世界の警察でもないんです。

ですから,というのも変かもしれませんが、世界の多くの国の反対を振り切ってまですることとは到底思えませんし、安保理決議を無視したアメリカの罪は大きいでしょう。国際協調の手段の無力さを実践してしまったのですから...。


あと,イスラームについてですが、本来は合理的で寛容な宗教なんですよ。

少数の過激派のためにイメージが大分,悪くなっていますが…。(どこぞのカルト教団よりは幾分かまともだと思います。)

尤も‘自爆テロをすれば天国に行ける’なんてのは後付けで、決してイスラームが殺人を許容する宗教というワケでは無いんですよ。ジハード(聖戦)だって、そのまま自爆テロってワケではなく「命を懸けて戦った人間が救われる」というだけの話であって、「命を粗末にした人間が救われる」ワケではないのです。

テロに走った過激派たちを許すことはできませんが、それ以上に僕は信仰心の強い彼らの心を逆手にとって対立を促したアメリカが、許すことの出来ないものに思えます。


でもホントに複雑な問題なんですよ。解決にはかなりの時間がかかるでしょうね...。