2014年5月21日水曜日

地方紙の逆襲③:全国紙の「ダメ」の理由(1)

前回から少し間が空きましたが、ここで連載を再開します。とは言うものの、この連載も今日を含めて残すところおそらくあと2回くらいになるとは思うのですが...。今日の主題は前回お伝えしたとおり、全国紙がダメになった理由を追究することにあります。と、その前に今回も地方紙の気になった社説を1つご紹介したいと思います。5.07騒動でもお馴染み(?)の神戸新聞から。(※媚びてるワケではありませんw)

美味しんぼ/放射能の情報が足りない(5月15日・神戸新聞社説)
http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201405/0006960489.shtml

福島では、除染の範囲や除染をどのレベルまで行うかなどについて、今もいろいろな意見がある。復興に当たる自治体が漫画の表現を心配するのは分かるが、行き過ぎると自由な表現を萎縮させる恐れがあり、弊害の方が大きい。情報の出し渋りや都合の悪い事実隠しこそが、復興の妨げになる。放射能を理解する知識や情報の重要さを、あらためて思う。

渦中の「美味しんぼ」についての言及。他にも京都新聞など幾つかの新聞が社説で同騒動を取り上げているのですが、個人的にどうしてこの社説が気に入ったのかというと、そもそも論として放射能に関する情報量が圧倒的に少ないということをまず大前提として捉えていることなんです。最近の報道を見ていると、概してそういう点を抜きにしていたずらに「ガセだ」、「言いがかりだ」と言ってのけるのみであり、議論すら出来ないような土壌を形成しようとしているように思うのです。

・鼻血云々以前にこういうスタンスが政府は気に入らないのだろう

ところでこの騒動、福島の2つの地方紙はどう扱ったのかというと、両者揃って「風評被害」の一点張りであまり良い印象は持てませんでした。たとえば福島民報で言及されている「除染をしても汚染は取れない」という福島大准教授の見解は間違ったものではなく、そもそもあれが除染ではなく移染であるという事実を把握していない(或いは隠蔽している)というのは由々しきところです。

・風評との闘い、応援団はずっといる(5月14日福島民報社説)
http://www.minpo.jp/news/detail/2014051415643
・美味しんぼ問題/不安と風評の解消が重要だ(5月20日福島民報社説)
http://www.minyu-net.com/shasetsu/syasetu/140520s.html

それに因果が不明とはいえ、鼻血の話は元々よく聞く話でしたし、調べてみるとチェルノブイリ周辺でも似たような症状の人が続出しているというではないですか...。(参考:チェルノブイリの鼻血問題に関する報告//http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=290262

と、まぁ前置きはここまでとして、連載を進めていきたいと思います。今回から2回に渡ってお伝えしていきたいのは、全国紙がなぜ現在のような状態に陥ってしまったのかということなのです。実は全国紙がダメになってしまったのは概して共通する事象からではないかと僕は分析しているんですね。それは何か?幾つかそのファクターというべきものはあるのですが、今日はその1つであるクロスオーナーシップについてお話したいと思います。

①クロスオーナーシップ制
全国紙を思い浮かべてください。たとえば産経新聞は統一教会フジテレビ、読売新聞は日本テレビ、或いは日経新聞はテレ東、毎日新聞は創価学会TBSオウムといった具合にそれぞれがいわゆる在京キー局と密接に結びついていることが分かると思います。実はこれ、世界的には異例なんですよね。実際にアメリカやイギリスなどをはじめとする欧米の先進諸国ではこれを何らかの形で禁止・抑制する法整備がなされているのが常です。(最近になってイタリアがクロスオーナーシップを認めるようになりましたが、依然として強い反発を受けているようです。)なぜでしょうか?各々の業界には勿論各々の理研というものがあります。たとえば新聞は再販制度に守られてますし、テレビやラジオは電波の独占を認められています。もし各々のセクションが互いに監視する体制が出来ていれば、その利権が行き過ぎることはなくなるのですが、現状そうはいきません。そのため結果として利権構造は強固なものとなり、当然ながら政府との密接なカンケイを構築することになるのです。そして勿論、言論の多様性という意味でも大いに問題があるのは言うまでもありません。


実はこれにメスを入れようとした人物が居ました。そうです、我らが小沢一郎先生です。加えて小沢さんは電波オークション制度の導入にも言及していたのです。もしそんなことをされてしまえばそのぬるま湯で甘い汁を啜ってきた大手メディアが大打撃を受けるのは言うまでもありません。だからこそマスメディアは死に物狂いで小沢一郎という政治家を潰しにかかったのでしょう。

実はそんな小沢さんの意向もあってか、民主党政権時に一度クロスオーナーシップ制度の見直しをしようという動きがあったのです。鳩山政権時のことでした。当時まだ比較的まともだった原口一博総務大臣は、改正放送法案に3年以内にクロスオーナーシップの再検討をするとの付則を盛り込もうとしていました。しかしその後間もなくして鳩山政権は崩壊。加えて菅政権の自爆に起因して2010年参院選で自民党に負けたことにより政権運営は悪化。自民党の意向を無視できなくなったこともあり、この部分についてはその後削除されることとなったのでした。

個人的な所感としても、一番問題なのはやはりクロスオーナーシップ制だと思います。言論の多様性という意味からは勿論ですが、加えて言えば資本が過度に集中するという事態を招いていることも大いに問題であると考えます。所詮資本と権力は≒(ニアイコール)の関係にあるといってもいいですからね。そして資本の集中する場所は政府と癒着するのが世の常です。実はこの体制を作ったのはあの田中角栄だったということなのですが、全くとんだ置き土産を残していったものです。あの人のやったことというのはかなり評価すべきところもあるのですが、この点については頂けませんね。すぐにあの強固な体制を切り崩すことはできないかもしれませんが、何らかの形でこれを規制する制度を整えないと、メディア自体が自滅してしまうでしょう。今日はもう1つ書きたい記事があるので一旦これにて失礼します。

ー参考文献ー
・マスコミはなぜマスゴミと呼ばれているのか
・マスコミが報道しない小沢一郎の英雄的行為とは何だったのか?(るいネット)
http://www.rui.jp/ruinet.html?c=400&i=200&m=270658

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